日記

定期演奏会をふり返って

慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団第138回定期演奏会,終演いたしました.当日は,1500名近くの方にご来場いただきました.エールで緞帳が開いた瞬間,埋め尽くされた客席を見て,心の中で「やった!」と叫んでしまいました.団員一同その気持ちは同じだったようで,塾歌は第一声から信じられない音圧でした.振りながらびっくりです.その後はもう何も怖くありませんでした.レセプションにてOBの方に塾歌をお褒め頂きました.ワグネルの伝統を担う学指揮として,大変光栄なことです.ありがとうございます.

慶應義塾塾歌

慶應義塾塾歌

今年度は2月から11月という短い期間ではありましたが,実りの多い10か月であったように思います.4年に一度のワーグナーイヤー,多くの依頼演奏,そして念願の委嘱初演.この4年間で最も忙しい年になりました.

今年の活動の大きな柱であった東西四連のための委嘱初演は,自分にとって大きな憧れでした.作詞の宮本先生,作曲の加藤先生が曲に託して下さった想いを,心を一つに力の限り演奏いたしました.ワグネルの新しいレパートリー:男声合唱のための合唱詩『ふなたび』が,これから多くの男声合唱団によって歌われることを願っています.委嘱初演の実現に際して,たくさんの方にご協力いただきました.心より感謝申し上げます.

演奏曲楽譜

演奏曲楽譜

学生ステージでは現代の邦人合唱作品:男声合唱とピアノのための組曲『天使のいる構図』に挑みました.ワグネルのレパートリーに風穴を!と意気込んで選んだのですが,想像を絶する難曲でした.自分が学生指揮者として歩んできた足跡をこの作品に残そうと必死に練習を重ねました.本番では,ただ仲間と歌うこと(振っていましたが)の喜びを噛みしめながら全力で演奏しました.今は胸を張って,この作品のための4年間だったと言えます.果たして,歴代学指揮の先輩方による名演に恥じぬステージに出来たのでしょうか.

第3ステージ『天使のいる構図』

第3ステージ『天使のいる構図』

演奏会のメインステージは,やはりローエングリン.今年のワーグナーイヤーは,R. Wagnerの生誕200年を記念した特別ステージでした.Vocaliseによる前奏曲,エルザのソロ,男声による重厚な婚礼の合唱,二群に分かれてのハイスピードな駆けあい,そして壮大なフィナーレ.“Ruhm deiner Fahrt(その旅路に栄光あれ)”の叫びに乗せて,現役・OBともにワグネルの新たな旅立ちを祝福しました.60名を超えるOBの方に賛助出演していただきました.ワグネルの歴史をずっと見守ってこられた先輩方とご一緒することができ,現役一同身の引き締まる思いで練習に励みました.大変貴重な経験になりました.ご多忙の中分厚い譜面を暗譜し,練習を重ねてくださったOBの皆様(拙い学指揮の練習に足をお運びくださった方も),ありがとうございました.

第4ステージ 歌劇『ローエングリン』より

第4ステージ 歌劇『ローエングリン』より

どんな時も本気で音楽を教えてくださった佐藤先生,学生ステージの練習にも来てくださった前田先生,いつも笑顔で声を聴いてくださった大久保先生,パート練習のため部室にまでお越しいただいた小貫先生,指揮法を指導していただいた上ステージの選曲まで任せてくださった辻先生,練習ピアニストとしてワグネルを支えてくださった永澤さん,そしてワグネルに入ってからずっと支えてくださったOBの皆様.4年間,本当にありがとうございました.

振り返れば,たくさんの出会いが詰まった4年間でした.先生方,仲間,すべての出会いに感謝しています.この4年間歌ってきた作品もまた,想い出と一緒に自分の中に生き続けるのだと思います.譜面を開けば,いつでも歌っていた頃の光景が甦ります.一緒に歌った音楽があるから,この出会いは一生忘れません.いくつ歳を重ねても,決して色褪せることのない大切な宝物です.

「丘の上」にて終演

「丘の上」にて終演

これからのワグネルが楽しみです.来年はどんな音楽を聴かせてくれるのかとワクワクしています.歌えば歌うほどもっといろんな曲を歌いたくなって,そのすべてが掛け替えのない想い出になって,そうして宝物を増やしていける場所.それがワグネルでした.卒団してもそれぞれの路で,それぞれの歌を歌って,そしていつの日か笑顔で,また同じ歌を歌えますように.

演奏後レセプションにて

演奏後レセプションにて

2013年度 学生指揮者
村山俊介