128回


 第128回定期演奏会 

2003年12月
7日(日) 昭和女子大学人見記念講堂


演奏曲目
  1. 畑中指揮 Liebeslieder
  2. 学生指揮 Mainly Barbershop ―Christmas Show!―
  3. 佐藤指揮 男声合唱組曲「北斗の海」
  4. 畑中指揮 男声合唱組曲「水のいのち」

先生の言葉 畑中佐藤大久保久邇谷池伊藤吉村

対談 畑中良輔ワグネルを語る
 PROGRAM 

慶應義塾塾歌
第1ステージ
「Liebeslieder」(愛の歌)

  1. Rede, Mädchen, allzu liebes!
      《口をきいておくれ、とても愛らしい娘さん》
  2. Am Gesteine rauscht die Flut
      《満潮の波が岩にくだけてどよめいている》
  3. O die Frauen, wie sie Wonne, Wonne tauen!
      《ご婦人方、あなた方は何と無上の歓びをしたたらすことか》
  4. Sieh, wie ist die Welle klar
      《ごらん、なんと澄んでいる波》
  5. Nachtigall, sie singt so schön wenn die Sterne funkeln
      《星がきらめく頃、ほととぎすが美しい歌を歌っている》
  6. Ein dunkeler Schacht ist Liebe
      《恋はうす暗いたて穴のようなもの》
  7. Wenn so lind dein Auge mir und s0 lieblich schauet
      《あなたの目が、それほどやさしく、それほど愛らしく私を見てくれたら》
  8. Ein kleiner, hübscher Vogel nahm de Flug zum Garten hin
      《小さなかわいい鳥が庭園の方に飛んでいった》
  9. Am Donaustrande, da steht ein Haus
      《ドナウのほとりに一軒の家が立っていた》
  10. Nein, es ist nicht auszukommen mit den Leuten
      《だめだ、あの人達とは旨くやっていけない》
  11. Schlosser auf, und mache Schlösser
      《錠前屋さん、起きて、錠前をつくって》
  12. Zum Schluß
      《終りに》

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第2ステージ
「Mainly Barbershop
 ―Christmas Show!―

  1. Caroling, Caroling
  2. Jingle Bells/Sleigh Ride Medley
  3. Mary Had A Baby
  4. Song of Christmas Medley

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第3ステージ
男声合唱組曲「北斗の海」
  1. Bering-fantasy
  2. 風景
  3. エリモ岬

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第4ステージ
男声合唱組曲「水のいのち」
  1. 水たまり
  2. 海よ

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 先生の言葉 

専任指揮者・畑中 良輔
いま、「水のいのち」を!

 疑いもなく、いま地球は破滅の道を急ぎつつある。地球上にすむわれわれの手で。それが愚かなことだということが解っていても、人間は地球から緑を剥ぎとり、森林を死なせ、土地を汚染することに情熱を燃やしているとしか見えない。すべて経済優先、効率能率第一の現社会体制は、人間から感性を抹殺しようとするばかりである。
 地球が地球を地球たらしめているもの。それは「水」。人間が人間を人間たらしめているもの。それも「水」。すべての「いのち」である水さえ、汚染され、自然そのものの「水」のいのちは地球から消えようとしている二十世紀末期。ドイツの誇るシュヴァルツヴァルト(黒の森)は酸性雨でその姿を失いつつあり、チェルノブイリの空からは放射性を含む雨が、またペルシャ湾岸の空からは黒い雨が。
 人間から感性を奪った結果は、地球が人間に対する復讐として、やがてその姿を現すだろう。二十一世紀は人間にとってまことおそろしい、受難の世紀となるに違いない。やさしくふりしきり、空から地上にいのちの水をそそいだ時代はどこへ? 母なる海から立ち昇り、また空へ還っていく水はどこへ? この「水の輪廻」をいまという時代にもういちどわれわれは問いかけよう。合唱曲の古典といわれるこの曲の中から、われわれはいま何を描き出せるか。真剣な問いかけが、人間に向かって、社会に向かって、音楽を通じ、メッセージされねばなるまい。科学的に浄化された水に「水のいのち」は、ない。
 この文章は、私が初めて「水のいのち」の男声版をワグネルで振ったときのものである。(91・6・16/大阪フェスティバルホール)。
 この曲に対する私の考えは全く変わってはいないが、げんざいの《水の状況》は年々ひどくなっている。私たちは“水を買う”という認識のない国民だった。自然そのものの“恵み”としての水は、い間や塩素を混入し、それでも足りずにトリはロメタンも導入しなければ水の浄化はのぞめなくなっている。東京で、ひとつ高層ビルが建てられるたびに、私はそこに出入りする人たちの使う水の量(十万人以上の人たち)の事を考えてしまう。
 国はビルをどんどん建てる。無制限に建てているのか、法的制約があるのか知らない。とにかく都会の水は、もはや汚水にしか過ぎなくなりつつある。飲料として水を買う人は東京ではもう65%にも達している。
 汚された水。浄化されない水。人間の70%は水で占められているその水を、誰が保証してくれるのか。
 中性洗剤などで水を汚して欲しくない。海は浄化してくれているが、その先はどうなるのだろう。水をもとの姿に還して欲しい。すべてをそのものの手に還して欲しい。私たちが今夕、高田三郎さんの最高の作品「水のいのち」をふたたび12年目にとり上げる理由も「水の危機」を、今夕の聴衆の方々の心の中に強く訴えたいからである。そしてこの名作の基となった高野喜久雄さんの詩にこめられたメッセージを、演奏の前に伊藤京子さんによって皆様にお届けしようと思う。

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客演指揮者・佐藤 正浩
『北斗の海』への想い

 ひさびさにワグネルの現役のステージに立つ事になった。去年はOBの皆さんとご一緒させていただいたが、現役のステージを振るのは4年ぶりになろうか? 学年もひと回りした事になるので全員が初めてのメンバー。フレッシュな顔合わせだ。

 彼らからの注文は「日本語でアカペラ」というもの。今まで僕が取り上げてきたのは「ワグネルが今まで歌ってないもの」だったし、「男声合唱のレパートリーを増やさなければ」という思いもあり、各局の芸術歌曲を自分で編曲したものを演奏してきたのだが、今回は始めから条件付き。さてどうしたものか?と考えた挙げ句、久々に現役と真っ向から向き合うにはいいチャンスかと思い引き受ける事にした。

 そこで選んだのが多田武彦さんの『北斗の海』。僕にとって初めての多田作品であり、アカペラの曲というのも僕にとっては初めての事。彼らは同じ多田作品でも『草野心平の詩から』を望んでいたようだが、僕は同じ心平の詩だけれども、もっと若々しいエネルギーを感じられる『北斗の海』を希望した。我々のフレッシュな関係だからこそぶつかり合えるダイナミックさを持っている曲だからだ。草野心平特有の宇宙感、無限の拡がりを持つというのも理由の一つ。荒々しい自然の営みをまざまざと見せつける海、我々人間を抱くような優しさをもった海、太古の昔から人間の哀しみを呑込み、また憧憬の的でもあった海、と本当に様々な表情を持つ海を表現出来たら、と思っている。

 人数の減少に伴い選曲には細心の注意を払わなければならなくなった。しかし、男声合唱のもつスケール感だけは失わないでほしい。器用にアンサンブルがうまくなるのも大切な事だが、僕の目指すのは男声合唱でしか味わえない厚み、深さ、そして色だ。だからこそ、この『北斗の海』を選んだ。もしかしたら僕の指揮する『北斗の海』は「多田武らしくない」とお叱りをうけるかもしれない。(そしたら多田先生、ごめんなさい!)
 いや僕が目指すのは、男声合唱の世界をも飛び越えた新たな世界なのかもしれない。

 ひさびさにワグネルの現役の前に立った。何かを変えようとしている彼等のエネルギーに拍手。しかし彼等の眼差しはやはりワグネルだった。ほっとした。

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ヴォイストレーナー・大久保 昭男
第128回定期演奏会に寄せて

 あらゆる面で大変な学生生活の中から、各自の貴重な時間を作って、合唱音楽の勉強を重ねてきているワグネリアンも、今年の定期演奏会を立派に迎えることが出来、おめでとうと心から私はみんなに声をかけたい気持ちです。毎年の定演を、何十年ものあいだ客席で聞いている私は、いつも深い感動を心に感じます。なんと云っても、ワグネル魂が昔からずっと底に脈々と流れているからだと思います。
 どこの合唱団も、多少の人数の変化はありますが、一番大切なことは、その合唱団の魂がゆるがないことです。どうぞ今宵の定演も、ワグネル魂をもって、聞く人の心に、深く歌いかけることを私は願ってやみません。

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ピアニスト・久邇 之宜
 慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団第128回定期演奏会開催に際し心よりお慶び申し上げます。伝統ある貴団と共演できることは喜びの一つですが、畑中良輔先生の棒の下で演奏できる事は私にとって何よりの快事であり、まさに「一期一会」の一刻をもたらしてくれる至福の時間であります。このような幸せを毎年享受できるワグネルは何と恵まれた合唱団でありましょうか。大学合唱団の雄として、イニシアチブをとってきた同団の輝かしい歴史はまさに素晴らしい先生とのめぐり合いと。それを生かしつづけてきた代々の団員の皆さんの汗と涙の上に成り立っていると思います。その一つの集大成が本日だと思うと、その場に居合わせるものの一人として感動の念を禁じ得ません。本日の演奏会の成功をお祈りし、又そのうちの何分の一かでもお役に立ちたいと思っております。  

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ピアニスト・谷池 重紬子
第128回定期演奏会おめでとうございます。

 今日の第1ステージで演奏される「愛の歌」は私にとって想い出深い曲の一つです。私が初めてワグネルと御一緒させていただいたのが第114回(1989年)での「愛の歌」でした。最初に練習に伺った時、多くの熱気溢れる学生と畑中先生の厳しいご指導に圧倒されました。また、多くの男子学生の中にポツンと一人いることに、当時今よりちょっぴり若かったのでとても気恥ずかしさを感じたものでした。それ以来私がずっと感じていることは、団員のひとつのものに向っていくひたむきさだと思っております。これがワグネルパワー!!となっているのでしょう。今日の演奏も畑中先生の“マジック棒”のもとワグネルパワー全開できっと素晴らしい演奏になるに違いありません。

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朗読・伊藤 京子
 高田三郎先生の名曲“水のいのち”の詩を朗読させていただくことになりました。
 まさか歌い手の私が、皆様の前で詩の朗読をするとは、当の本人も考えてみないことでした。
 一つの歌を歌うにあたり、その詩を何度も朗読してから楽譜にとりかかる、と言う勉強は当り前のこととしてやって来た私ですが、「詩」そのものを皆様の前で朗読するなどと言うことは初めての経験なので、不安な気持ちで一杯です。でも、畑中先生のおすすめですので、ただ、一生懸命させていただきます。
 高野喜久雄先生の“深い詩”をどれだけ語ることが出来るか――勇気を出して朗読させていただきます。

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振付・吉村 さやか
定期演奏会に寄せて

 まずはワグネルの皆様、定期演奏会おめでとうございます。今回皆様の大先輩にあたる、ワグネルOBの宮島将郎さんのご紹介で振付をさせて頂きました。初めは合唱団に振付け!? きちんと振りは伝わるのか!?と不安もありましたが、指揮の仲光君をはじめ、さすがワグネル!素晴らしくノリが良い。とりあえず何でもやってみて下さる皆さんの姿に大変助けられました。勉強に練習に、大変な日々だったことと思いますが、今日は本番! 思う存分ステージを楽しんで来て下さい。皆さんが楽しんでいればそれは必ずお客さまにも伝わります。今日は私もお客様と一緒に、客席で皆さんの楽しいパワーを頂きますね!  

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 座談会 

対談!“畑中良輔ワグネルを語る”

普段よりお世話になっている畑中先生に、お話を伺ってきました。
インタビュアーは実行委員長の重光と、学生指揮者の仲光です。
重光まず今年のワグネルの印象はどうでしょうか?
畑中先生 いまは少数精鋭主義で行きたいなと思っている。いまは人数が多くないから、1人1人がしっかり正しいピッチで音楽的に歌うこと、たいてい男声合唱っていったらマッシブルな力でいくのが男声合唱だと思われているけど、いまはそれに対しての反旗をひるがえしているところなので、去年やったみたいな淡彩抄みたいな、いままで考えられないようなものをやっているわけです。だから男声合唱の別な面の開拓っていうのかな、こういう可能性、世界もあるということをわかっていただきたい。男声合唱はデリケートであって、密集和音の独特のサウンドがある。少人数ならではの新しい世界を開拓したいと思っている。
重光現役のワグネリアンはそれにこたえられているでしょうか?
畑中先生 今年の四連でやった「Liebeslieder」でその可能性がはっきり出てきたように思えます。今年の学指揮が非常にしっかりしているんですね。音楽ってものをよく体の中に把握している。知識だけじゃなくて。そういうものを持っている学指揮が現れたから、僕は非常にやりやすくて、助かっている。そのあたりが大きなターニングポイントになるんでしょうね。それがずっと続いてくれればいいけど。その伝統がね。今までもしっかりやってるんだけど、今年は桁外れにいいような気がします。
仲光ターニングポイントとおっしゃいましたが、来年以降、どんなものをやっていきたいですか?
畑中先生 大勢でないとできないものもある。例えばワーグナー。ワグネルだからやっぱりワーグナーはやりたいんだけど、少人数ではワーグナーの音量が出せないから、いまはできない。いまの人数で何ができるかということが、毎年僕の悩みのたねで、来年どれくらいの人数が入って来るか、それで曲を考えるから。
重光水のいのちは約10年ぶりになりますが…。
畑中先生 定期演奏会にきていただいた人たちに、全ての命の根源である水がどこまで危険なところにきているかを音楽によってメッセージしたいという気持ちが大きいから、それを夏合宿でまず団員に、特に1年生の人たちに人生論を交えて伝えた。それによって彼らの目が開いたのか、耳が開いたのか、心が開いたのか…。みんないい人生を送りたいけどそれができない状況にある。日本だけでなくて…。音楽を通じてプロテストしていく気持ちを、水のいのちを歌うことで心の中で育てて欲しいな、と。いまの現実にとにかく押しつぶされないようにしたい。
 こういういまのような閉そく状況にあって、水道水を飲めない時代がきてしまって、10数年前に水のいのちを演奏した時も、同じメッセージを書いた。そのメッセージがいまもそのまま通用してしまう。いや、もっと悪くなってきている。あの頃の水道水に入っていたのはまだ塩素だけだったけど、今はトリハロメタンが入るようになってしまった。トリハロメタンはいろんな有機物と結合して発ガン性が強くなってしまう。そんな水を今の日本は国民に飲ませなければならなくなってしまった。僕は東京にビルが一つ立つごとに、こころがすごく痛む。そのビルで人々がどれだけ多くの水を使うか…。それで浄化しきれなくなって、塩素を入れるようになった。プールの水よりもひどいかもしれない。それでも浄化しきれないから、有害とわかっていてもトリハロメタンのようなものを使う。ビルの規制などをしない政治が貧困だと思う。
仲光水のいのちを演奏するにあたっては…。
畑中先生 水が海から水蒸気となって上がっていくだけじゃなくて、もう1回、どの人にもやわらかい平和な雨が降るように強くメッセージしたいなと思っている。水の輪廻でどんな汚れたものでも海が浄化してくれる、ということを。
仲光水のいのちを取り上げたのは最近の事だと思いますが…。
畑中先生 僕自体が、水と現代の生活に関して、音楽がどこまで関れるかをあまり考えなかった。考え出すと、大変な問題を抱えてて、高田さんがやっぱりそこまで深くは考えられなかったかもしれないけど、そういうものを引き出せる音楽を高田さんが書いているわけだから、やればやるほど、実感できるんだよ。
仲光初めてワグネルに来られたときは声作りを主眼にされたのですか?
畑中先生 そうせざるをえないでしょう。僕は38歳のときにワグネルに来たけど、聞かせてちょうだいっていって歌った声が、ハーモニーは鳴らない、変な声で、一瞬目の前が真っ暗になって…。それまで僕はアマチュアを教えたことがなかったから、戸惑ってしまった。どうしたらいいのか分からなくなってしまったのね。そのときは、声というのはどうやったら出るものなのかという理論から始めた。2時間くらい声の仕組みについて話をして、じゃあ声を出してごらんっていったら、全然違う声が出ちゃったことに僕が驚いて、なんてアマチュアって素晴らしいんだって思った。専門家を教えても知識とかがあってそうはいかないから…。
仲光発声については何かありますか?
畑中先生 人間の持っている体の機能を全部使い切って、いろんなものができればいいなと思う。もしみんなの感受性が豊かになれば、Liebesliederを歌えば自然とドイツ音楽のできる発声になり、水のいのちをやれば自然に日本語がきれいに出るようになるし、それが一番自然なのね。自然であること、自然に感じること、それを強く感じる。気持ちが変わるだけでも声が変わるということです。軟口蓋をどうしろ、支えをしっかりしろというのは些末なことであって、木下先生は芸大で発声を絶対に教えなかった。「音楽を感じたらそのような声になるよ」って。ところがみんなそれが貧しいから、なかなか声がそうならないけど、これは名言だと思う。音楽を感じる心があれば、発声が変わるっていうこと。だからみんな変わらないで機械的に歌っていることが多いから、いくら言っても表情一つ変わってないんだもの。
重光先生から何かを感じ取って歌うことが必要だと考えますが…、
畑中先生 それは4年間一緒に練習すれば、僕の考え方と人生に対応する姿勢は分かると思う。それが分からないのはまだ感受性が鈍いっていうこと。80歳を過ぎても僕は椅子に座って指揮をしたことはワグネルを教える上では一度もない。これだけ僕を燃え立たすものが音楽の中にある。例えば合宿では朝から夜まで、1時間の休みが2回あるだけであとは1日中びっしり音楽をやっているじゃない。そんな指揮者は他にいないと思う。それだけ情熱をもっている人はいないんじゃないかな。
重光そこまで情熱をもっていただけるのは…。
畑中先生 いや、僕はワグネルのためじゃなくて、自分のためにやっているのかもしれないね。
重光今年は「A.C.T.」がはこね学生音楽祭で最優秀賞に選ばれましたが…。
畑中先生 その話を聞いて驚いたんだけど、それはやっぱりスティーブ(仲光)が力をもってるってことだと思うよ。
重光バーバーショップはお聞きになったことはありますか?
畑中先生 いろんなテープで見たり聞いたりはしているよ。僕の中にはないジャンルだから、大いにそれができて楽しんで、人を癒すジャンルのものとしてやればいいなと思う。僕がやれって言われてもできない。そういう能力はないから。
重光定演で仲光の指揮でやりますが…。
畑中先生 いいんじゃない? 大いにやればいいと思うよ。
仲光あぁ、大いにやります。(笑)
一同あはは。(笑)
畑中先生 でも、僕にできないことをやるんだから、僕と同じことをやろうとしても、絶対に上手くいきっこないことは分かってるでしょ。それは20歳と80歳っていう差だよね。
仲光先生の棒で歌わせていただいて、練習のときに毎回おっしゃることが違うと思うんですが…。
畑中先生 言うことも違う、振ることも違う、全部が毎日違うんです。100回振ったら100回違う。だから気を許さないでほしい。その時々で何を感じ取るかによって違ってしまうんです。自分が思ったことをその時々で正直に要求し、「じゃあやって」っていう。だから本番だってどうなるか、僕にも分からない。
重光若い頃にはどんな音楽をお聞きになったのですか?
畑中先生 まあ何でも…好奇心の権化だから。例えばロックも聞くし。ローリングストーンズもドームに行って聞いたし。ビートルズが初来日したときも武道館に聞きに行って。フラグリンだってそうだね。ちゃんとお金払って行ってるよ。CDも持ってる。ビートルズは全曲持ってるよ。サンタナは少し持ってる。それと同時に、MJQみたいな高度な室内楽もあるね。サンタナを聞いて、楽しめないような人たちはかわいそうだと思うね。
仲光一つのジャンルに特化するべきではないと…。
畑中先生 全てのものに可能性のある人間になって欲しいから。その一端としてワグネルがあるっていうことだと思うよ。
仲光まだまだ健康な畑中先生ですが、健康法についてお聞かせください。
畑中先生 僕はもう10年間野菜ジュース。13種類か14種類をミキサーにかけて、毎朝2杯飲んでる。夜にもう1杯飲む。それが僕の健康法だね。この歳になってまだまだ元気でやっていられるのは、肉ではなく野菜の力。それと水だと思っている。野菜はできれば減農薬か無農薬だけど、探すのが大変。例えば大葉は6回も7回も農薬をかけるほど一番虫がつきやすいのね。あんなにきれいな葉っぱがあること自体がおかしい。だから大葉を使うときは20分以上は水につけてから使うようにしている。
重光最後に先生がワグネリアンに期待することは何ですか?
畑中先生 よりよき人生の出発がワグネルであってほしいなと思う。中学・高校というのは一応自意識はもっている。だけどその自意識が本当に自分のものとして働くのは大学の年代だと思う。そういうときに、水のいのちのようなものにめぐりあった人は一生どれだけ素晴らしい広がりができるか、そういう体験を全然しない人生を送った人は、歌うにしても聞くにしても、貧しいと思うから。ワグネルで頑張って下さい。
ご多忙の中、ありがとうございました。
貴重なお話はまだまだありましたが、紙面の都合上、割愛させていただきました。
これからもワグネルをよろしくお願い致します。
 

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