123回
演奏者


 第123回定期演奏会 

1998年12月
15日(火) ティアラこうとう大ホール
18日(土) 東京厚生年金会館大ホール


演奏曲目  試聴可 
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  1. 畑中指揮 朔太郎の四つの詩
  2. 学生指揮 「智恵子抄」より
  3. 佐藤指揮 「中也の詩による歌曲」より
  4. 北村指揮 男声合唱組曲「アイヌのウポポ」
  5. 北村指揮 男声合唱組曲「山に祈る」
  6. 畑中指揮 男声合唱組曲「月光とピエロ」
  7.      アンコール

先生の言葉 畑中北村佐藤大久保長野谷池藤田

 PROGRAM 

慶應義塾塾歌
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第1ステージ
「朔太郎の四つの詩」

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  1. 五月の貴公子
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  2. 孤独
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  3. 陽春
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  4. 緑色の笛
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第2ステージ
「智恵子抄」より

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  1. 智恵子抄より巻末のうた六首
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  2. 或る夜のこころ―智恵子抄より―
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第3ステージ
「中也の詩による歌曲」より

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  1. 北の海
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  2. サーカス
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  3. お道化うた
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第4ステージ
男声合唱組曲「アイヌのウポポ」

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  1. くじら祭り
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  2. イヨマンテ(熊祭り)
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  3. ピリカ ピリカ
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  4. 日食月食に祈るうた
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  5. 恋歌
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  6. リムセ(輪舞)
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第5ステージ
男声合唱組曲「山に祈る」

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  1. 山の歌
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  2. リュック・サックの歌
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  3. 山小屋の歌
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  4. 山を憶う
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  5. 吹雪の歌
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  6. お母さん、ごめんなさい
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第6ステージ
男声合唱組曲「月光とピエロ」

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  1. 月夜
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  2. 秋のピエロ
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  3. ピエロ
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  4. ピエロの嘆き
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  5. 月光とピエロとピエレットの唐草模様
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アンコール&ステージ・ストーム
  1. 牛追い唄
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  2. そうらん節
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  3. 五木の子守唄
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  4. 最上川舟唄
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  5. Slavnostni sbor
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  6. 若き血
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  7. 我ぞ覇者
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  8. 慶應讃歌
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  9. 丘の上
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 先生の言葉 

専任指揮者・畑中 良輔
清水脩先生十三回忌に寄せて

 今年は、清水脩先生の十三回忌にあたります。日本の音楽界が清水先生からいただいたものはあまりにも大きく、到底ここに書き盡くせません。オペラでは、グランドオペラとして「大佛開眼」のスケールの大きさ、また、名作「修善寺物語」、室内オペラとしての「炭焼姫」「セロ弾きゴーシュ」、逸話オペラとして「吉三玄海天」など、今なお、絶えずくり返し上演されています。他に「交響曲」はじめ多くのオーケストラの作品もありますが、歌曲としては中也詩「在りし日の歌」「抒情小曲集」また「奥の細道」全句歌曲典などの名作があります。そうした声楽曲の中では、特に合唱作品にあって、他の追随を許さぬ名作を次々発表され、日本の合唱がこんにちの姿になるまで常に先頭に立ち、作曲に指導に、そして「全日本合唱連盟」の理事長として大活躍されたのです。合唱人で、清水作品を歌わないところはない筈です。日本の合唱が今や世界のトップ・レヴェルに達し得ているのは、まさしく清水先生の力あってのことなのです。合唱の中でも殊に男声合唱に力を入れ、「月光とピエロ」以下、枚挙にいとまのないほどの名作の数々を発表されてイッタのです。宣誓は大阪外語の佛文出身だけに(詩の選び方が)尋常でない鋭い歌詩の選択ぶりを見せています。中也、朔太郎をはじめ、大手拓次、宮沢賢治などの詩のなかから、深い内容を掴み出し、音楽を重ねていきました。その音は決して流麗ではなく。むしろ苦渋にみちていて、ひとつの音をえらび、構築していくためのT苦しみUがどの曲にも溢れています。それは耳あたりのいい、快い音楽ではないけれど、それだけに歌い込み、聴き込むほどに、清水作品のT力Uは聴くものの心深くを動かす筈です。
 「慶應ワグネル男声合唱団」の専任指揮者となったその年に、「朔太郎の三つの詩」を委嘱作品として初演しました。清水先生がワグネルのために書かれたり編曲されたりして下すった曲は多く、「鎮魂歌」のように大作もありますが、これは今回時間的理由もあって、プログラムにくめなかったのが残念です。
 今夕は、清水男声合唱作品の世界から、その多様性の再認識の意味もあって、あらゆる角度からのプログラミングを試みました。それぞれのステージが、それぞれの清水脩の世界を描き出す筈です。古典的名作となった「月光とピエロ」も、新しい解釈のもとに再構築を意図しました。現代管理社会の組織の中で、個の人間が何をなし得るか、人間として大切なものを次々に奪われ、組織のためのひとつの歯車としてしか認識されない人間の存在を身すぎ世すぎして泣き笑いする男の悲哀を中心に描き出そうと試みています。また、朔太郎悲傷の世界と同時にまたその他異なったさまざまの清水作品を今夕の聴衆の方々は、それぞれの心、それぞれの中に私たちのメッセージを受け取っていただきたいと思うのです。そしてこの「清水脩の夕べ」が今新しく清水作品を見直す契機ともなり、また今夕のこの歌声が、遠く、天なる清水先生にまで届くようにとの祈りの心をこめて私たちは(今夕)歌いたいのです。  

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客演指揮者・北村 協一
第123回定期演奏会に寄せて

 清水脩先生の作品に出会ったのは関西学院に入った年、50年も前になります。
 それは昭和23年(1948年)戦後復活した第一回の全日本合唱コンクールの男声合唱部門課題曲として作曲された「秋のピエロ」でした。この曲は評判を呼び、やがて現在の形の五曲の組曲「月光とピエロ」になり二曲目に組まれています。組曲という連曲になった男声合唱曲はそれまで日本には無く、プログラムを組む時は同じ傾向の曲を集めていましたが、ご存じの通り、現在ではもう当たり前のように何方もこの形式で作曲されています。これはどうやら「月光とピエロ」の成功が先駆けとなっているようで、世界でも珍しい傾向です。私も第二回の東西四連(1953年)にこの組曲を選び、とても好きで演奏旅行も定期演奏会でもこの曲を取り上げました。そして今や「月光とピエロ」は男声合唱組曲の定番中の定番として広く愛唱されているのは周知の事実です。
 今回私が指揮をする「アイヌのウポポ」は1961年に立教大学グリークラブのために書き下ろされたものですが、1965年9月ニューヨークの世界合唱祭に参加した関西学院グリークラブのレパートリーの一つとして取り上げ、これも私の好きな曲になりました。この曲は初演以来暫く忘れられた存在でしたが、アメリカでは思いの外評判が良く、その後海外へいく男声合唱団の、これ又定番となりました。
 「山に祈る」はワグネルの先輩達が組んだあの有名なカルテットTダークダックスUが清水先生に依頼した彼らの重要なレパートリーの一つですが、山男の遭難という題材とその母親の朗読と合唱という構成が当時とても新鮮でこれも評判高く、その後良く演奏される曲です。母親が遭難したわが子の手記を読む下りはどうしても涙腺がゆるんでしまい、指揮をしていてとても困ります。
 清水先生の作曲なさった曲で「反戦」のジャンルになる数曲も男声合唱団にとって重要なレパートリーですが、尤もポピュラーに愛唱されているのは日本の民謡を西洋和声で編曲された多くの曲でしょう。今回はそれぞれ四人の指揮者が「清水脩の日本民謡」をアンコール曲として演奏しますが、男声合唱の入門曲としてとても重宝される曲です。最近でこそ西洋和声によらない日本の伝統的響きを考えた日本民謡も作曲されていますが、何しろ貧弱な我が国の初等音楽教育を受けさせられて育ってきた学生にとってはやはり清水作品の方が理解しやすいようです。
 私の合唱音楽生活はどうしても清水作品抜きには考えられません。今回この記念の演奏会で指揮できる事は正に感無量です。先生に感謝を込めて指揮したいと思っています。  

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客演指揮者・佐藤 正浩
第123回定期演奏会に向けて

 僕はある時期オペラ歌手になる事を夢見た事がある。それを断念したのにはいろいろな理由があるのだが、その大きな理由に「言葉の壁」があった。ヨーロッパの言語で書かれたオペラを日本人である自分が、どこまで理解し表現出来るか疑問だったのである。発音を勉強し、きれいに歌えたとしても、それでは世界に通用しない。それを自分の言葉として歌わなければ人は感動しないのである。ヨーロッパに住むようになりその言葉を話すようになり、ようやくその疑問が取れるようになった。だがすでに時遅しである。
 今回僕は初めて日本語の曲を取り上げる事になる。ワグネルの皆にとって言葉のハンディは当然クリアされているはずなのに、色が無い。自分の言葉として歌っていないのである。何年か前にキャスリーン・バトルが日本歌曲を歌うというのでコーチングした事がある。日本語は「ARIGATÕ」しか知らない彼女だが、詩を訳し、詩の内容を説明していくとみるみるうちに色が現れて来るのである。アメリカ語のアクセントを完全に取り除く事は出来なかったが、彼女が紡ぎ出す優雅な声の線の中に彼女“自身”、彼女の“心”があった。ちなみにこのうちの何曲かがCDになって発売されている。
 さて我々の清水脩「中也による歌曲集」。日本人としてどこまで自分自身を表現出来得るか、乞う御期待。  

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ヴォイストレーナー・大久保 昭男
第123回定期演奏会に寄せて

 今年の定期演奏会は、全曲日本語という、ワグネルとしてはいつもと違ったステージです。ドイツ語、フランス語、その他の国の言葉も、歌として歌われる時、独特の美しさがあるものです。私は若い時は、日本語の歌はあまり心に深く感じる事がありませんでした。それが、ワグネルを長い間にわたって指揮されていられた今は亡き木下保先生が、女声合唱をお振りになった時でした。合唱が静かに始った時、何という素晴らしい子音の響きが聞こえてきました。弱声で一糸乱れないその日本語の発音には、その時初めてその美しさに感動し、何十年後の今でも私の耳に残って居ります。
 ワグネルの諸君も今宵の演奏会を立派に歌ってくれるものと期待しています。発声法と発音は、共に大切な勉強の基礎であります。
 今後も、より以上の音楽に向かって、勇気を持って進んでいってくれる様、私は願ってやみません。  

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朗読・長野 羊奈子
<山に祈る>に寄せて

 この度、北村協一先生から御依頼を受けまして、第123回定期演奏会で<山に祈る>の朗読でワグネル・ソサィエティー男声合唱団の皆様と共演させていただきます事を、心から嬉しく存じて居ります。昔、一回だけTワグネルUと歌わせていただきましたが、今回は朗読で共演、誠君という青年のお母さんの役を朗読させていただきますが、誠君と同年輩の皆様の元気な歌声に包まれて、どのようなTお母さんUになれたらよろしいのか、私の心の中で現在T誠君のお母さんUを一生懸命育てて居ります。演奏会の日を楽しみに、しかしドキドキして待って居る今の私ですが、北村協一先生、そして共演のTワグネルUの皆様、何卒よろしくお願い申し上げます。  

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ピアニスト・谷池 重紬子
第123回定期演奏会に寄せて

 第123回定期演奏会おめでとうございます。
 ついこの間入団してこられた皆様が別室で塾歌を練習しているのを聴きながら何だか…と思っていましたのに、あっという間に成長されて卒団なさっていらっしゃるのをみて、とても感慨深いものがあります。
 今年はひさびさに北村先生の演出ステージ、また長野先生のすばらしいナレーターと共に「山に祈る」をご一緒させていただきます。
 今宵、共演させていただくこの曲が聴きに来てくださった多くの方の心に残りますことを願っております。    

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ピアニスト・藤田 雅
清水作品に接して

 今回、初めて清水脩氏の作品を勉強する機会を得て、ひとりの日本人作曲家が歩んだ道のりを縮図として見ることが出来たような気がする。日本における西洋音楽の歴史は明治維新以後の洋楽輸入に始まったのであるが、その後の百年余の間には大変な試行錯誤が繰り返されたことは言うまでもない。清水の作品を見て私が強く感じるのは、戦後の日本の作曲家が経験した苦悩と、それを乗り越えようとする情熱である。ルネサンスからジョン・ケージまでを自ら駆け足で通り抜けて、その行方にオリジナリティを見いだそうとした彼らは、ある意味ではドン・キホーテであった。さまざまな西洋の「語法」を習得し、そこに自らの音楽を見いだそうとした彼らの熱き情熱は、古き良き時代に対する郷愁の念を呼び起こすものではあるが、彼らの意志が必ずしも成功を導いたわけではないことも事実である。今日のグローバルな世界音楽の脈絡の中でとらえるならば、彼らの作品の多くは、アルバムの中の懐かしい写真のようなものであると言わねばならないかもしれない。
  今回私がピアノを担当する事になった「中也の詩による歌曲」(3曲)、智恵子抄より「或る夜のこころ」は、一見それぞれが違う作曲家の筆によると感じられる作品である。それは、清水脩と言う作曲家が生きた時代、特に戦後日本が歩んだ急速な高度成長期の中で、新しいものを追求しようとする作曲家の巨大なエネルギーと旺盛な作曲意欲を顕著に表していると言えるであろう。しかし残念ながら、それら凡てが必ずしも「作曲」として成功してるとは言い難い。試行錯誤のあまりに、書かれた音列が実際に生み出す音楽的エネルギーと、作曲家が書き記したものとが相反する場面を見い出すことが出来る。また、新しい「音」を探るうちに、逆にそれらが見失われている場合もあるようにも思われる。しかしつぶさに見ていくと、これら4曲の「音」の中には、清水脩と言うひとりの作曲家が経験した「作曲」に対する想像を絶するような葛藤が、血液のように脈々と流れているのを私は強く感じるのである。  

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