120回
演奏者


 第120回定期演奏会 

1995年12月
9日(土) ザ・シンフォニーホール
10日(日) 愛知県芸術劇場コンサートホール
16日(土) 東京厚生年金会館大ホール


演奏曲目  試聴可 
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  1. 畑中指揮 男声合唱とピアノのための「祈りの虹」
  2. 佐藤指揮 サミュエル・バーバー歌曲集
  3. 学生指揮 Nänie(哀悼の歌) op.82
  4. 北村指揮 男声合唱組曲「在りし日の歌」
  5. 畑中指揮 喜歌劇「ジプシー男爵」より
  6.      アンコール

先生の言葉 畑中(1)畑中(2)北村大久保佐藤大川

 PROGRAM 

慶應義塾塾歌
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第1ステージ
男声合唱とピアノのための「祈りの虹」

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  1. “炎”
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  2. “業火”より
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  3. (Vocalise)
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  4. “ヒロシマにかける虹”
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第2ステージ
「サミュエル・バーバー歌曲集」

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  1. Rain Has Fallen
       《雨は降りつづく》
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  2. The Monk and His Cat
       《修道士と猫》
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  3. Sleep Now
       《眠れ、いまは》
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  4. Sure on This Shining Night
       《この輝ける夜に》
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  5. I Hear an Army
       《軍勢がこの国に》
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第3ステージ
「Nänie(哀悼の歌) op.82」

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第4ステージ
男声合唱組曲「在りし日の歌」

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  1. 米子
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  2. 早春の風
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  3. 閑寂
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  5. また来ん春
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第5ステージ
喜歌劇「ジプシー男爵」より

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  1. Ensemble   《アンサンブル》
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  2. Werberlied   《徴兵の歌》
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  3. Zigeunerlied   《ジプシーの歌》
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  4. Valse   《ワルツ》
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  5. Marsch   《行進曲》
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  6. Liebeslied   《愛の歌》
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  7. Nach Wien   《ウィーンへ
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  8. Einzugsmarsch und Valse   《入場行進曲とワルツ》
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アンコール&ステージ・ストーム
  1. Ave Maria
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  2. 間奏曲
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  3. Hotel
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  4. シャンパンの歌(“こうもり”より)
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  5. 若き血
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  6. 我ぞ覇者
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  7. 丘の上
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 先生の言葉 

専任指揮者・畑中 良輔
愉しい一夜を

 ワグネルとしては6年ぶり二度目の「ジプシー男爵」である。はじめての時はその歌詞の量の厖大さに、果たして全部このドイツ語を覚え切れるのだろうか、という不安がつきまとった。一年にとってはまったく未知と云ってよいドイツ語。しかも早いテンポの曲では、あの子音の多い言葉さばきなどの連続で、夏合宿は歌う方も棒振る方も必至の形相。「もうこの曲は二度とイヤだ。もう振らない。」と宣言したものの、この《精神脆弱時代》だからこそ、精神のスパルタ的訓練が必要なのではないか、と考え直した。昨年の「ファウストの劫罰」の量に匹敵する大曲。しかしこの二曲を歩んで来た学生はすごく強くなっている筈だ。忍耐と集中の持続の上に今夜の演奏は花を咲かせる。歌う方が楽しくなくて何のシュトラウスぞ。目下の練習は苦しみの連続だが、当夜にはよろこびの歌がホールいっぱいになる(予定)。ウィンナ・ワルツのリズムに程遠い東の国の男達ではあるけれど、オーストリー=ハンガリー二重帝国とハプスブルク家崩壊の一歩手前にある爛熟の文化の意味も、ワルツ、ポルカ、マーチと共に頭の中に、心の中に、体の中に入って来ている筈である。
 むずかしい理屈よりも、まずは御来場の方々と共に、一生忘れ得ぬ“愉しい一夜”をすごせれば、と目下苦しんでいる最中である。  

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「祈りの虹に寄せて」
 私にとって50年という重さ ――――
 あの夏の日。白い雲がゆっくり流れ、よく晴れた日だった。白楊樹のみどりが風に光っていた。1945年8月6日。この日私は上海地区、中支派遣軍隼飛行第222大隊の暗号解読室で勤務についていた。通常定例の暗号作業に取りかかった時、緊急暗号電文が入って来た。何はともあれ《陸四》と呼ばれる赤い暗号書と乱数表を開き、解読を始めた。
 「テキハヒロシマニシンガタバクダンヲトウカセリ。ゼンシカイメツノモヨウ。ジゴクウシュウニサイシテハ シロノイルイヲチャクヨウセヨ。」
 戦局が日に日に絶望的状況に陥っていくのは、相手方の暗号傍受で判ってはいたものの、この日の新型爆弾が何であるかは、次の暗号の来る迄見当もつかないまま、不安な一日となった。そして8月15日。私は内務班の当番だったが、「日本が敗けたぞォー」という声に驚いて兵舎を飛び出した。「やっぱり―」と思う心と、何かの間違いでは、と祈る心が交錯した。玉音放送は雑音のため、何のことやらわからなかったのだ。
 その日からちょうど50年。忘れようもないその日がまたやって来る。

*     *

 以上は今年の「四連」のメッセージに書いた文章だが、その後、世界の状況は刻々と深刻の様相を呈して来はじめた。ヒューマニズムとすぐれた芸術文化を持つフランスの核実験は、一体何なのであろうか。フランスの文化とは何だったのだろうか。世界の反対を押し切って核実験を強行するシラク大統領の“人間性”とは何なのだろうか。
 疑いもなく“地球の滅亡”へ盲進している現状を、地球人は黙って見ているだけでよいのだろうか。
 ヒロシマだけの問題ではない。世界最初の被爆者だけの問題ではない。にんげんすべての痛切な“現実”として、われわれはヒロシマを感傷的に捉えてはならない。直視有るのみ。今夕のこの四曲は、四連の時とまた異なった精神のあり方が問われなければならない。  

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客演指揮者・北村 協一
第120回定期演奏会に寄せて

 今年のワグネルの私の指揮をする曲目は例の踊り路線から離れて、アカペラ、邦人ものです。合唱の原点は無伴奏。となればやはり、男声合唱の特性を熟知されている多田さんの曲です。
 今回取り上げた「在りし日の歌」は三十歳でこの世を去った中原中也の晩年、愛児文也を失った悲しみの中で読まれた詩を終曲に配置し、五編の詩を同名の詩集から多田さんが男声合唱のために作曲されたものです。多田さんはもうすでに50組をこえて男声合唱のために組曲を作曲されていますが、この曲は彼の6番目のもの、1959年当時唯一のプロ合唱団だった東京コラリアーズのために作曲され、定期演奏会でいまは亡き福永陽一郎さんが初演されました。当時私は練習の段階からずっと聴いていましたが、音楽が“立って眺めていたっけが…”のところにくると、どうしても胸が締め付けられる思いを禁じ得なかったことを思いだします。この部分の作曲の方法がとても優れていて(音の数を極限まで減らして)愛児を失った詩人の癒されない深い悲しみと寂寥感を男の声の特性に相俟って実に見事に作曲されているからに他ならない、と思いました。そしてその内どうしても自分もこの曲の指揮がしたいと考えながら初演を聴いた記憶があります。
 しかしこの組曲はとても音域が広く、音程を採るのも難しく、そんなに指揮する機会がありませんでしたが、邦人作品でアカペラの曲をという畑中先生のご希望があり、現役にちょっと頑張ってもらおうと考えてこの組曲にしました。  

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ヴォイストレーナー・大久保 昭男
第120回定期演奏会に寄せて

 今年もまた色々なことがありました。世界も、日本も、毎年、新しい大きな出来事が起り、また過ぎ去っていきます。しかし目を自然に向けて見ると、何と美しい色が身近にあることでしょう。今年も草木が素晴らしい紅葉を見せてくれ、日本の秋が立派に来て、また冬になります。自然とまったく同じ様に音楽の世界も力強く運んで来ています。
 ワグネルの諸君も、4月に新入生を迎えて、春合宿、夏合宿を経て堂々とこの120回目の定期演奏会を迎えます。雨の日も風の日も、ゆるがない合唱にかける若者の情熱を燃やし続ける一人一人に、私は深く心をうたれます。またワグネルOBのみなさんにも現役を強く支えて下さり感謝しています。志賀高原の夏合宿には、元部長の千種先生も度々私のレッスンに、お顔を見せて下さいました。この様な暖かいお心に見守られて音楽するワグネリアンは幸せものです。これからもワグネルと共に音楽の勉強をしてゆきたいと思って居ります。  

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客演指揮者・佐藤 正浩
今夕の演奏会に寄せて 〜憧れのブレザー〜

 僕はワグネルの団員だった事はないが、ワグネルのあのブレザーを持っている。よく“どぶネズミ色の”と言われるあれ、しかしある人達にとっては大変な憧れなのである。それは、僕が初めてワグネルと演奏旅行をした当時の2年生だった連中から、後年(彼らが4年生になった時だったと記憶する)贈られた。
 高校1年の春、“六連と言うのは凄いらしい”というので合唱部の先輩達と上京しワグネルを聴き大感激して以来、僕はワグネル派だと言える。高3の夏にはワグネルが僕の田舎(会津若松)を訪れ、そして翌年には僕自身、九州の演奏旅行に同行する事になる。それから毎年のように春と夏の演奏旅行、練習ピアノと演奏を共にし、遂に憧れのブレザーを手に入れる。(僕はもともと勉強が良く出来る方ではなかったので、慶應に入ろうなどとは考えもしなかった。)それ以降ワグネルのステージでは常にそのブレザーを着ている。なので、あるOBの中には、僕がてっきり団員の1人と思っている人がいたそうである。あり得る話だ。それを着てヨーロッパへも行った。演奏旅行でア・カペラの曲を一緒に歌った事もある。いくつかのアルバイト(御座敷)もした。
 こうしてワグネルの1人1人と同じように、このブレザーが僕に数々の思い出を残してくれた。今更ながら当時の彼らに礼を言いたい。そして願う。このどぶネズミ色のブレザーが、永遠に、少年の僕が抱いていたように、憧れの的であって欲しい、と。演奏会おめでとう。  

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独唱・大川 隆子
今夕の演奏にあたって

 今夕は慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団の演奏会にようこそお出で下さいました。この男声合唱団の魅力は何と言っても若々しい力に充ちた、ダイナミックスと純粋な和声の美しさにあると思います。大学生の合唱団として知識欲も旺盛で、毎回変化に富んだプログラムを組み、聴衆への配慮も行き届いています。私も今回で三回目の共演となりますが、いつも楽しいお仕事で合唱団の皆さんの演奏への真剣な姿勢には襟を正し、多くのものを学ぶ事が出来ました。ヨハン・シュトラウスはウィンナオペレッタの黄金時代を築いた大作曲家ですが、ジプシー男爵はシュトラウスがオペラを目指した作品で、音楽の美しさは無類です。又難しい歌唱技術も要求されます。
 合唱団の皆さんと心を合せて演奏しますのでどうか最後迄ごゆっくりお楽しみ下さいませ。  

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